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古代人のアーカイブズ

天体観測データを反映した巨大建造物

 古代世界において、メキシコ、チチェン・イツァ遺跡のククルカン神殿<画像の階段部分に注目!>に秋分、春分の日に羽毛をもつ蛇が降臨する仕掛けなど、古代人のアーカイブズ_f0148999_180112.jpg天体を正確に観測し、そのデータを反映させて建造された巨大建造物はいくつもある。アイルランドのいわゆるダーナ神族によるとされる巨石建造物で、冬至の日に太陽が正確に建物の奥深くに差し込むのを見ると、その現象もさることながら、そこに辿りつくまでの膨大な天体観測の歳月と、データの蓄積を世代を越えて成し遂げてきた古代人の努力に身体が震え感動をおぼえる。

 オーストロネシア語族の足跡を中部スラウェシに訪ねたとき、電気がなく街の明かりのない漆黒の闇の中に、キラキラとささやくように星がまたたくのを体験したことがある。惹き込まれるように、同じ時間帯、同じ方向に、再び輝く星が語りかけるのを神秘的な気持ちで連日見ていた。最初に、天体観測を始めた人々も、たっぷりと時間のある生活の中で、天空を見上げていたのだろう。そして、天体の「サイクル」に気がつき、記憶を増やし、記録するようになった。やがて優れた天体観測者が各地に現れ、農業生産や宗教儀式に反映させていったことだろう。
 
 しかし、考えてみよう。冬至や春分、秋分は年に一回しか起こらない現象だ。当日、天候が悪く観測できない不運の年もあったであろう。天空に関心を持ち始めた人々が、天体の奥深いルールを、正確に認識するようになり、現象を正しく予測出来るようになるまでには、数十年、あるいはもっと長い長い、気の遠くなるような歳月を要したかもしれない。
 最初は、天体の現象に単に興味をもち、やがて惹き込まれ、壮大な奥深い天体のルールを徐々に学んでいったであろう古代人。その行為は個人の記憶から、世代を越えて継承し蓄積を重ねていける伝承システムを必要とし、「古代のアーカイブズ」を築き始めていったことだろう。さもないと、天体の複雑なルールに気づき記憶してきた一個人の能力を、次世代に継承し、やがて体系化し、巨大な建造物などに反映させていくような、非常に正確で高度な総合的知識・能力形成にまで到達することは出来なかった。
  その記録材料は何であったろうか? 地面に描いた? 石板に? 数世代に連綿とつながる情報の蓄積と検索に適した記録材料として、樹皮紙Beaten Bark Paperがすでに広く使われていたと考えられるのではなかろうか? あの正確な天体観測や暦の実現を可能にした、記録材料にも目を向ける必要があろう。

  古代人の創造的でバイタリティに溢れていた日々を、想像できる生活や環境が、現代社会からどんどん失せている。機会を見つけて、雄飛したオーストロネシア語族の足跡を辿り、古代の偉業を思い返し、パワーをもらうことも大事だろう。

by PHILIA-kyoto | 2009-07-06 18:22 | オーストロネシアン研究  

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