人気ブログランキング | 話題のタグを見る

難渋するワヤンベベールの復元準備作業

ジャカルタのギャラリーで展示とミニ・レクチャー

  東京・王子の紙の博物館で2010年6月、盛況裏に開催された企画展「新石器時代から花開いた樹皮紙の美」。その後、インドネシアに2セットしか残っていない樹皮紙に描かれた≪ワヤンベベールWayang Beber≫の困難な復元準備作業が一歩ずつ現地で進んでいる。現存する2セットは、長年の使用と高温・多湿の保管環境により、劣化損傷が著しい現状となっている。<下画像は、東ジャワでのワヤンベベール上演風景>難渋するワヤンベベールの復元準備作業_f0148999_10462364.jpg

  100年以上の空白から、幅75cmで4mもの長さのワヤンベベール用の樹皮紙を製作できる熟練者が見つからなくなっており、中部スラウェシで製作可能な製作者を数年かけて探し求めてきた。84歳と75歳の二人の婦人の製作技術が目を引いたことから、カジノキの原料を各地から集め、テスト的な製作を依頼してきた。だが、石器ビーターでカジノキの樹皮を叩き延していくことから、4mもの長さの樹皮布をこれまで作った経験がないと、その壁を越えるのは意外と難しい現況だ。また、50年前頃のものでは存在した、巻取り可能に平坦に仕上げることが中々出来ない。さらに、一カ月ほど要する工程のどこかで、飛び交う調理の煤や汚れが付着し、製品とならなくなる…などなど、実際やり始めてみると、予想をはるかに越えて難渋している。
  また、伝統モティーフを描く絵具が、ジャワ島でもバリ島でも「アクリル絵の具など」の新素材に占領され、古来の絵の具traditional pigment & dyeの製法が消えかけている(あるいは、消えてしまった)。これは、深刻な問題で、個人でどうのこうの出来るレベルではなくなっていた。この問題は、世界無形遺産に登録されたインドネシア・バティックにも共通するようで、次の一手を考えなければならない。難渋するワヤンベベールの復元準備作業_f0148999_1050352.jpg

  インドネシアの地元では、あまり深みのある調査研究や危機感をもった活動に出会えないが、やはり地元なので、外からの情報や刺激を注いでいかなければならない。
  ということで、ミニ・レクチャーと展示会exhibitionをジャカルタJakartaのギャラリーで行った。展示した樹皮紙に描いた作品は、260x125cm, 220x128cmの大きなものと、69x50cmのもの3点、バリ島伝統のカマサンstyle2点の計7点。

  私どもの世代で、あと何枚このような作品が製作できるのか? 夢見る、古来の素材、絵の具を使った作品は、果たして、いつ実現できるのか?

by PHILIA-kyoto | 2010-10-13 11:09  

<< メキシコTemplo mayo... Bulili村の伝統樹皮布コス... >>