タンボラ火山遺跡での発掘作業
世界の記録に残る最大の火山噴火が、インドネシア・スンバワ島のタンボラTambora火山で1815年4月に起こった。噴火前には4000m級のインドネシアで最高峰の山だったと推定されている。200年前の大噴火で山の上部1/3ほどが吹き飛んでしまい、今は2755mしかない。大噴火のすごさは、今も残る巨大なカルデラに痕跡をとどめている。<画像は南西側からの眺望、2015年撮影>
噴火により、おそらく3つの王国がすっぽりと灰に埋もれてしまった、とされる。世界最大の噴火であったことから、1816年のヨーロッパや北米は空を覆う噴火灰の影響で異常気象となり、特異な年となった。これについては2013年に出版されたThe Year without Summer1816に詳述されている。
また、異常気象生じたヨーロッパでは雨の多い陰鬱な天気の中で『ドラキュラ』へとつながるジョン・ポリドリの『吸血鬼(ヴァンパイア)』の着想が生まれ、英国の風景画の巨匠ウィリアム・ターナーらが描いた赤みがかった日没の景色には 1815年のタンボラ火山の灰が影響していたとする研究もある。
世界最大の噴火の様相と200年間タイムカプセルのように封印されてきた複数の王国の実像を解明するために、インドネシア国立考古学研究所(National Research Center of Archeology)は2007年から毎年約1か月間の発掘作業を行ってきた。木製農機具、紡錘車、磁器、炭化した稲モミ、建物部材、ビンロウ使用具、クリス(短剣)など多種多様な品々が出土している<画像参照>。人骨も3体みつかった。
発掘における課題は、ロープや衣類など脆弱な有機物を、将来の調査研究等に活かせるよう適切に保存処理する高度な技術がインドネシアにないこと。また、すでに王国はイスラム化していたが、モスクなどの中心的な建物が見つかっておらず、町の全体像や配置が皆目わかっておらず、上空からのレーダ探査法などの使用が可能となる支援が期待されている。
一部のタンボラ火山遺跡出土品は、国立考古学研究所デンパサール地方事務所(Balai Arkeologi, Denpasar)で公開されている。
日本でほとんど知られることのなかった1815年のタンボラ火山の大噴火であるが、いくつかの200周年行事が日本の支援を受けることから、日本での情報量も増えていく事が期待される。
by PHILIA-kyoto | 2015-02-01 20:59 | タンボラ火山噴火1815