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ホントに石器ビータは「透かしwater-mark技法」に使える道具?

3つの判断根拠

  以前の事だが、台湾の権威ある考古学者などは、模様の刻まれた石器は陶器の表面に模様を刻印する道具であって、樹皮布などに透かし模様を加工する道具ではない、と猛反発された時期もあった。

  現在では、猛反発された石器ビータであるが、以下の3つの根拠から、「透かしWater-mark」を樹皮布などの表面に加工する道具とされる。
1つめは、2008年8月に中部スラウェシの秘境と当時言われていたバダ渓谷で、用途の見解が分かれていた問題の石器を所有する老婦人が偶然の幸運で見つかったのだ。この婦人は、非常にレアな模様の刻まれた石器ビータを保有していて、使い方を自ら説明してくれたのである。この生き字引のような老婦人の説明があったことで、長く続いてきた混乱の論議に決着がついた。
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<画像>混乱した論議に終止符を打った中部スラウェシ・バダ渓谷の老婦人(2008年8月撮影)


  2つめは、ハワイには樹皮布に3-400種類とされる透かしwater-markを加工する技術が存在した点である。 100年以上前の透かし模様の加工された樹皮布が数百枚残されていて、樹皮布に透かし模様を加工する技術が
 認められた。

  3つめは、石器ビータへの関心が高まり、世界各地で見つかった石器ビータの比較研究が進んだことによる。 石器の周囲全体にラタンなどの取っ手を固定する溝が刻まれていると、機能的に強い力で振り下ろす使用法が自然であり、陶器の表面に刻印する用途には適さない事が分かってきて、用途の見分けが可能となった事。

  樹皮布/樹皮紙技術を数万キロの距離で伝播させたオースロトネシアンに関する調査研究は、まだ始まったばかりの感があり、石器ビータを専門的に調査研究する方は極めて少ない。また、透かし模様を加工する石器
 ビータは、単独でも専門外のコレクターに収集されてしまうことが多く、発見時の科学的データが失われていたり、豊富な数での比較研究が、なかなか出来ない状況なのである。
  この樹皮布/樹皮紙に「透かしwater-mark」を加工できるということは、素地の品質が均質で良好であるこ
 とを示しており、”紙の起源”という別の観点からも世界各地での「ユニークな透かし模様の刻まれた石器ビータ」の発見例が増えていくことが願われる。



【近刊】《Austronesian Diaspora~A New Perspective》Proceeding of International Symposium 2016 at Nusa Dua Bali.
     ISBN 978-602-386-202-3
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   インドネシア国立考古学研究所(ARKENAS)が昨年7月に主催し行った国際シンポジウムの記録集。発行
 元はガジャマダ大学出版部(ugmpress@ugm.ac.id)
   主として前回開催の国際シンポジウムから10年を経た、インドネシアにおけるオーストロネシアン調査
 研究の最新成果をまとめたもの。36人が執筆。全594頁。


*第2項は、2017年3月5日日本時間21:10加筆した。

by PHILIA-kyoto | 2017-03-05 16:45 | オーストロネシアン研究  

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