樹皮紙Beaten Bark Paper紀行 ⑦

アマテ樹皮紙は檀紙のような美しさ

 アメリカでアマテ樹皮紙を調査観察しながら気づいたことがある。多くの相手をしてくれた研究者、図書館人が、現在メキシコで作られている(お土産用の)アマテ樹皮紙の作り方を見聞していて、その情報に頭が支配されていることだった。
  現在、メキシコ土産として入手できるアマテ樹皮紙は、丸めて折れ目が入ると亀裂が生じ、硬くて非常に粗雑な代物だ。「これがアマテ樹皮紙だ」と多くの方々は信じ込んでいる。
 
  だからマヤやアステカの時代には、さぞかし粗雑でひどい樹皮紙を当時の人々は我慢して使っていたと思い込んでいる。今回、調査観察する前はそのような先入観を植え付けられていた一人だった。
 
 右側に掲載した画像は1531年に製作された記録のある、f0148999_2216160.jpgスペイン征服直後にメソ・アメリカで絵文字の描かれたアマテ樹皮紙だ。観察を始めて、この紙を世界の紙の種類で譬えるとすると「何という紙名が相応しいか?」と自問し、すぐに日本の将軍家や宮中が占有していた高貴な「檀紙」の風合い、温もりのある肌触りが最も似ていると思った。朱印状や特別の用途に使用された日本の最高の和紙である檀紙。繊維の均質さ、地合いの良さ、原料処理の美しさ。まさに、それらの特徴を備えた紙が目の前にあった。それが、初めて手にしたメソ・アメリカの樹皮紙から受けた強烈な印象だった。
 透過光でご覧いただく紙の内部の端正な素材感には正真正銘の高貴さがある。f0148999_2224534.jpg

 
 お土産用に売られているアマテ樹皮紙とは月とスッポンの違いではないか!

 







  
 これまでにも、インドネシアのポノロゴ産の樹皮紙ダルワンに触れたときにも、美しい!!と思った。 手が透けて見える画像がそれだ。f0148999_2236995.jpg

 世界の樹皮紙は、ほとんどの場所で完全に忘れられ、質が悪く粗雑な古代人の紙という先入観で支配されている。

 いま、機会があって世界各地の樹皮紙を触って調査観察する機会を与えられた。きっと数千年前の古代人が、樹皮紙の美しさを、その技術を、そしてその時代を、もう一度教えてくれているように思える。もう少し、埋もれた古代人の紙「樹皮紙」のことを調べてみよう。
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by PHILIA-kyoto | 2008-06-09 23:05 | 樹皮紙 紀行  

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